「平泉」と「小笠原諸島」世界遺産に登録へ ユネスコ

よーかい

2011年05月19日 18:30

文化遺産候補「平泉」(岩手県)と、自然遺産候補「小笠原諸島」(東京都)が、いずれもユネスコの世界遺産に登録される見通しとなった。
最終的に登録を決めるユネスコの世界遺産委員会は、6月19日からパリで開かれる。


 
ユネスコ世界遺産センター(パリ)は6日(現地時間)、登録の妥当性を「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階で評価する諮問機関からの勧告内容を日本政府に伝えた。
文化庁、環境省によると、「平泉」「小笠原諸島」への勧告はいずれも「登録」だった。

 
「平泉」について文化遺産候補を評価する国際記念物遺跡会議(イコモス)は、金色堂を含む中尊(ちゅうそん)寺、毛越(もうつう)寺などの四つの庭園と、信仰の山とされる金鶏山について、
「仏国土(浄土)を表す資産として顕著な普遍的価値がある」
と評価した。


 
しかし、奥州藤原氏が住んでいた「平泉館」跡の「柳之御所遺跡」については、「顕著な普遍的価値の一部をなすものとは認められない」として構成資産から外すことを条件に「登録」を勧告。
金鶏山に鉄塔があることにも触れ、「資産価値への悪影響がみられる」と指摘した。


 「平泉」は前回挑戦した2008年、イコモスから浄土思想との関連が弱いとして構成資産の再検討を求められ、「登録延期」となった。
今回は資産を四つ減らして臨んでいた。
文化庁と地元は今後、イコモスの新たな指摘にどう対応するのか協議するという。

 
「小笠原諸島」は南北約400キロにわたる約30の島々。
登録区域は父島列島と母島列島の居住区域外などの一部、聟島(むこじま)列島などの陸地約6360ヘクタールと周辺海域約1580ヘクタールだ。



大陸と一度も陸続きになったことがない小笠原諸島は「東洋のガラパゴス」と呼ばれ、独自に進化した貝や植物が多い点が評価された。
登録された場合も、引き続き固有種を脅かす外来種への対策を続けることなどが求められた。

 
一方、日本政府がフランスなどと共同推薦した東京・上野の国立西洋美術館本館を含む建築家ル・コルビュジエ(1887~1965)の「建築作品」は、勧告そのものが6日に間に合わず、後日通知となった。

 
コルビュジエの「建築作品」はフランスを中心に6カ国、19の建築作品群。
日本では59年完成の西洋美術館本館が該当する。
09年の世界遺産委員会では追加情報の提出を求めた上で次回以降の審議に回す「情報照会」とされていた。

 
今回は42件の推薦候補があり、「登録」と勧告されたのは文化、自然、複合遺産合わせて12件。
「情報照会」は2件、「登録延期」は17件、「不登録」は6件で、5件の文化遺産候補は後日勧告とされた。

 
世界遺産の総数は911件。
日本では「法隆寺地域の仏教建造物」「屋久島」など14件が登録されている。

 
両省庁によると、06~10年に諮問機関が「登録」を勧告した文化遺産は延べ47件あり、このうち登録されなかった3件はいずれもイスラエルの「ダンの三連アーチ門」だった。
同時期、自然遺産では「登録」と勧告された18件すべてが登録された。


    ◇


 〈世界遺産〉 


1972年にユネスコ総会で採択された世界遺産条約に基づき、世界遺産一覧表に登録されている資産。
人類全体の宝として損傷や破壊などから遺産を保護するために、国際的な協力態勢を確立するのが目的。
建造物や遺跡などの文化遺産、生態系や地形などの自然遺産、両者の特質を備えた複合遺産の3種類がある。



(2011年5月7日 朝日新聞)

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